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iDeCoとNISA、比較でわかる活用術(2021年版)

iDeCoとNISA、比較でわかる活用術(2021年版)

著者: 谷口 裕梨監修: 泉田 良輔2021/01/28 (最終更新:2021/03/01)
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1. はじめに

1.1. なぜ今iDeCoとNISAなのか(つみたて投資のメリット)

近年、iDeCoとNISAに注目が集まっています。雑誌や情報番組でも取り上げられることも増えてきたため、気になっているという人も多いのではないでしょうか。

iDeCoは個人型確定拠出年金、NISAは少額投資非課税制度という、いずれも資産形成のための税制優遇制度です。
今、iDeCoとNISAが注目されている理由の一つに2019年に金融の審議会によって公表された「老後2000万円問題」があります。このレポートにより、私たちは老後までに2000万円の資産形成を行う必要性が提起されました。

資産運用の力を利用して老後まで「長期・分散・つみたて投資」で資産形成をする必要性が注目された結果、近年のiDeCoとNISAブームにつながったと言えるでしょう。
実際ここ数年でiDeCoとNISA、つみたてNISAの口座開設数は増加しています。

iDeCo、NISA、つみたてNISAの口座開設数の推移グラフ

iDeCoとNISA。2つはそれぞれ異なる特徴、さらにはそれぞれ異なるメリットとデメリットを併せ持っています。

そのため、税制優遇効果を十分に発揮させるためにはそれぞれの特徴をしっかり理解する必要があります。

そこで今回は、このiDeCoとNISAについて、それぞれの違いを比較しながら皆さんがこの2つの制度を上手に活用するポイントについてみていきたいと思います。

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2. iDeCoとはどのような制度か

2.1. iDeCoの特徴とは

iDeCo(確定拠出年金)は、確定拠出年金法に基づいて実施されている私的年金制度です。
日本に住む20歳から60歳未満のすべての人に加入義務がある国民年金や厚生年金は「公的年金制度」です。

それに対して、iDeCoは「私的年金制度」ですので、加入は任意です。iDeCoは加入を希望する人が自分で申込み、自分で毎月掛金を拠出し、自分で掛金を運用する「DIY年金」と呼べるでしょう。

【3つのiDeCoの特徴】
・掛金を5000円から設定できる
・原則60歳から受け取れる
・複数の金融商品を組み合わせられる

2.1.1 掛金は5000円から設定可能

iDeCoの掛金は月々5000円から1000円単位で設定することが可能です。
この時、毎月の掛金が全額所得控除の対象になります。ただし掛金の上限額については職業や勤務先の退職金制度などによって異なります。

2.1.2 原則60歳から受け取れる

積み立てた年金原資は原則60歳から受取ることができます。
その際は年金として分割して受取る場合は「公的年金等控除」、一時金として一括で受取る場合には「退職所得控除」を利用して受取ることができます。(詳しくは次項「iDeCoのメリット・デメリット」参照)。

2.1.3 複数の金融商品を自分で組み合わせられる

先ほどiDeCoは「DIY年金」とご案内しましたが、この最たる所以は「自分で運用する」必要があるというところです。

「自分で運用する」とは、自分でどのような運用商品(定期預金、保険商品、投資信託)にいくら投資すべきかを決めなければならないということです。
この時、複数の金融商品を組み合わせて運用することも可能です。

自分で運用商品を選択し、メンテナンスをしながら長期間かけて運用するため、老後の受取額は拠出した掛金の合計額や運用成績によって一人ひとり異なります

特に投資信託を選択する場合は、長期間かけて資産を増やすことが期待できる反面、商品によっては元本割れをしてしまう危険もありますので、商品選びが重要と言えるでしょう。

元本割れをしてしまっても、誰かが元本を保証してくれることはありません。
すべての運用結果が自分に帰属する点は注意が必要です。

2.2. iDeCoのメリット・デメリット

次に、iDeCoのメリット・デメリットについて詳しくみていきたいと思います。

2.2.1 iDeCoのメリット

まずiDeCoの最大のメリットは「3つの税制優遇」と言えるでしょう。
先項でも少し触れましたが、iDeCoは「入り口」「途中」「出口」の3つのタイミングに税制優遇ポイントがあります。

【3つのタイミングとは】
・入口:掛金を拠出する(毎月積み立てる)とき
・途中:運用益が非課税で再投資されるとき
・出口:資産を受取るとき


まず「入り口」とは、掛金を拠出する(毎月積み立てる)時です。
iDeCoの毎月の掛金は、全額が所得控除の対象となります。

会社員の人は、年末調整の時に国民年金基金連合会が発行する「小規模企業共済等掛金控除証明書」を勤め先に提出します。
自営業者は証明書に記載のある掛金の合計金額を確定申告します。

こうすることで、掛金全額に所定の所得税、住民税の税率をかけて算出された金額分の税が軽減されますので、所得が多い人ほどメリットが大きい税制優遇措置と言えます。

次に「途中」の税制優遇とは、運用益が非課税で再投資される点です。
現在は投資信託などの金融商品で運用した際の利益については、20.315%の税金がかかりますが、これがiDeCoなら非課税で再投資されます。

そのため、運用益が全額投資に回りますのでより大きな複利効果が期待できます。
(iDeCoの運用資産には、別途特別法人税が課されますが、現在は課税が停止されています。)

最後に「出口」の税制優遇とは、受取る時の税制優遇です。
iDeCoで積み立てた年金資産は原則60歳から受取ることが可能です。
iDeCoで増えた年金資産を受取る場合には、年金として分割して受け取る場合は「公的年金等控除」、一時金で受取る場合には「退職所得控除」が設けられています。

また、年金と一時金を組み合わせて受取ることも可能。
その場合は年金部分については「公的年金控除」、一時金で受取る部分には「退職所得控除」が併用して利用できます。

通常、投資信託で運用した場合、運用資産を解約して受取る場合は利益に対して20.315%の源泉分離課税が適用されます。
しかし、iDeCoの場合はそれぞれの控除枠を利用して積み立てた資産を受取ると、控除枠の範囲内で受け取った金額分は非課税で受取ることができます。

この2つの控除枠をフル活用して、税制優遇効果を発揮することができます。
この際は、自分の控除枠がいくらあって、iDeCoで積み立てた資産がいくらあるかを考えながら控除枠を上手に利用する必要があります。

受取にはテクニックが必要であると覚えておくと良いでしょう。

2.2.2 iDeCoのデメリット

次にiDeCoのデメリットについて見ていきたいと思います。

【3つのデメリット】
・原則60歳まで引き出すことができない
・手数料がかかる
・受取る時は積立額、運用益が併せて課税される可能性がある


1つ目のデメリットは、iDeCoは原則60歳まで引き出すことができないことです。
一般的に定期預金や投資信託はいつでも自由に解約することが可能です。
しかし、iDeCoの場合は途中で積立を中止し解約したいと思っても、60歳までは積み立てた資金を受取ることはできません。

そのため、住宅購入資金の頭金にしたい、教育資金としても積み立てたいという場合はiDeCo以外の方法で積み立てる必要がありますので注意が必要です。

2つ目のデメリットは手数料がかかることです。
手数料は、iDeCoの実施者である国民年金基金連合会に払う手数料とiDeCoの口座を開設する金融機関に払う手数料、投資信託の信託報酬など運用商品の手数料があります。

【国民年金基金連合会に払う手数料】
・加入時または企業型確定拠出年金からの移換時に2829円
・掛金納付の都度105円
・還付する必要が生じた場合の還付手数料が1048円
※将来年金として受取る際は年金給付1回につき440円(税込)の手数料がかかる

【金融機関への手数料】
金融機関により異なるので、金融機関を選ぶ際は手数料の金額を確認する必要


3つ目のデメリットは、iDeCoは受取る時は積立額、運用益が併せて課税される可能性がある点です。

前項ではその際に「退職所得控除」と「公的年金控除」が利用できる点を説明しました。
会社員で勤務先にしっかりした退職金制度がある人は、自分の本来の退職金だけで退職所得控除を使い切ってしまい、iDeCoの分まで空きがないケースが想定されます。

また公的年金控除も同様で、自分の公的年金だけで控除額を超えてしまう人は、iDeCoの受け取り分は結局課税になってしまうというケースもあります。
iDeCoを始める前に、以下のことを事前に確認しましょう。

【iDeCoを始める前の確認事項】
・自分の勤務先の退職金制度の有無
・制度がある場合の退職金の概算
・退職所得控除の概算


そうしないと、いざiDeCoで積み立てた資産を受取る際「あれ、iDeCoって非課税じゃないの?」と驚くことになりますので、注意が必要です。

2.3. iDeCoの申込からスタートまでの流れ

2.3.1 勤務先の年金制度の確認

いざiDeCoを始めようと思ったら、最初にすべきことは自分の勤務先の企業型確定拠出年金制度や確定給付年金制度の有無を確認することです。
この制度の有無によりiDeCoの拠出限度額が異なるためです。
会社の担当者に確認するとすぐに答えてもらえるでしょう。

2.3.2 金融機関の選択

自分の拠出上限額がわかったら、次にiDeCoの口座を開設する金融機関を選ぶ必要があります。
金融機関によって口座管理手数料や金融商品のラインナップが異なります。

最近ではインターネット専用の証券会社も増えてきました。
しかし、ネット証券会社は個別に相談ができないケースがありますので、資産運用初心者には少しハードルが高いと言えます。
できれば初心者の人は、しっかりとしたアドバイザーがいる金融機関を選択する方が良いでしょう。

2.3.3 口座開設の手続き

金融機関を選択できたら、そこで口座開設の手続きとなります。
現在のところiDeCoの申込には勤務先の確認印が必要になりますので、口座開設までには1ヶ月程度時間がかかると思っておいたほうが良いでしょう。

2.3.4 運用商品の選択

口座開設が無事完了したら運用商品を選択します。
この運用商品については、途中で積み立てる銘柄の変更だけでなく、これまで運用で積み立てた資金を別の商品に変更することもできます。

例えば、リスクのある商品で長期間運用し、十分増えたので利益を確定させたい場合にはリスクの低い商品(定期預金や国内債券の投資信託など)に資産を預け替えることでそれ以降の価額の下落を防ぐことが期待できます。
これらの機能も上手に使うことでリスクを軽減させることが期待できます

2.4. こんな人はiDeCo向き

それでは、資産運用を始めるのにiDeCoが向いている人はどのような人でしょうか。
iDeCoは掛金について全額所得控除が受けられますので、年収が多い人ほどメリットが大きいと言えます。

その反面、専業主婦の人など所得が少ない人にはあまりメリットが感じられないかもしれません。

次に自分の勤務先に退職金制度がない人はiDeCoが向いているでしょう。
受取時に退職所得控除が存分に使えるためです。

一方でしっかりとした退職金制度がある人は必ずしもiDeCoにこだわる必要はないと言えるかもしれません。

3. NISAとはどのような制度か

3.1. NISA、つみたてNISAの特徴とは

NISA(少額投資非課税制度)とは、2014年にスタートした個人投資家のための税制優遇制度です。

通常株式や投資信託などを購入した場合、解約時に利益が出ていた場合、もしくは配当金や普通分配金を受取る場合は利益に対して20.315%の税金がかかります。

NISAを利用する場合、NISA口座(非課税口座)内で毎年一定金額の範囲内で投資信託や株式を購入すると、これらの金融商品から得られる利益を非課税で受取ることができます。

NISAには一般NISAジュニアNISAつみたてNISAの3種類があり、特に一般NISAとつみたてNISAの違いは以下の通りになります。

NISAとつみたてNISAの比較表

NISA口座は1人1口座に限られていますので、一般NISAとつみたてNISAを併用することはできません。
そのため、自身の投資スタイルによってどちらか一方を選択する必要があります。

3.1.1 一般NISAの特徴

一般NISAは、毎年120万円分の金融商品(株式や投資信託など)が購入可能です。各年に購入した金融商品は最長5年間非課税で運用することができますので、この非課税期間内に売却をした場合、売却して得た利益は全額非課税で受取ることができます。
5年間の非課税期間が終了したときは、

①翌年の非課税枠に移して(ロールオーバー)、引き続き5年間非課税で運用する
②課税口座に移して引き続き課税口座で運用する(移した後に得た利益は課税対象となります)
売却する


以上3つの選択肢が用意されています。

ロールオーバーとは、非課税期間の5年間が終了した時に、5年間かけて運用した金融商品の残高を、翌年の非課税枠を利用することでさらに5年間運用する方法です。

このロールオーバーをすると、一般NISAでも最大10年間非課税で運用できます。
さらにこのロールオーバーには金額の上限がありません。

5年前に120万円で購入した投資信託が5年後200万円になっていたとしても、非課税期間で得た利益ごと、その全額を翌年の非課税枠に移すことができます。
ただし、このロールオーバーでその年の非課税投資枠を使い切ってしまうと、その年に関してはNISA口座での新規購入はできません

ここで注意すべきことは、非課税期間が終了する5年目に特段手続きをしなければ、②の「課税口座に移して引き続き課税口座で運用する」が自動的に選択されてしまう点です。
そのため、ロールオーバーを希望する場合は、非課税期間が終了する最後の年(5年目)の定められた期日までにロールオーバーを希望する旨の申請が必要になります。

期限内に手続きをするのを忘れてしまうと課税口座に移されてしまい、後から変更することができませんので注意が必要です。

さらに、課税口座に移される際は、非課税期間が終了時点の終値(投資信託は基準価額)で移されます。
この時、当初の購入時の価格(もしくは基準価額)より下がっている場合は、この下がった価格で課税口座に移されます。

非課税期間満了時の売却価格に関するグラフ

例えば当初1万口あたり1万円で購入した投資信託が5年後9000円になっていた場合、9000円で課税口座に移管されますので、再び1万円に戻ったタイミングで売却すると、差額の1000円が課税対象となります。

当初からすると利益が出ていないのに課税となる可能性があるため、NISA口座で運用する場合は5年後の選択を誤らないよう注意が必要です。

3.1.2 つみたてNISAの特徴

【3つの特徴】
・非課税で持てる投資総額は最大で800万円まで
・投資できる商品が限られている
・ロールオーバーができない


つみたてNISAは、非課税投資枠が毎年40万円に縮小するかわりに、購入した年から20年間非課税で運用することができます。

非課税で保有できる投資総額は、一般NISAが600万円に対し、最大800万円となります。
投資できる商品は長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託に限られているため、つみたてNISAで株式を購入することはできません。

非課税期間の20年間が終了したときは、自動的に課税口座に移されます。
つみたてNISAの場合はここでロールオーバーを選択することはできませんので、課税口座で運用を継続するか、売却するかを選択することになります。

2021年現在では、つみたてNISAは2037年までの制度とされていますので、新規に積立ができるのは2037年までです。
最終年の2037年に購入した投資信託についても20年間(2056年まで)非課税で保有することができますので、長期積立で資産形成をしたい人に適した制度と言えます。

3.2. NISA、つみたてNISAのメリット・デメリット

それではNISA、つみたてNISAのメリット・デメリットはどのようなものがあるでしょうか。

3.2.1 NISA・つみたてNISAのメリット

【NISAのメリット】
・配当金や分配金、譲渡益などが非課税
・運用資産をいつでも引き出せる


最大のメリットは、なんと言ってもNISA口座で購入した金融商品の配当金や普通分配金、譲渡益等が非課税になる点です。
通常投資信託か株式を100万円購入し、150万円になったタイミングで売却したとすると、利益に対して20.315%の税金がかかります。

よって、約10万円が税金としてかかることになります。
このように考えると、20%の税金の大きさに驚くところですが、この税金が非課税で運用できるのがNISA最大のメリットと言えるでしょう。

特につみたてNISAの場合は非課税期間が20年と長期のため、その間に複利効果で資産が増えることが期待できます。
将来の資産形成のために資産運用を始めたい人には心強い味方となってくれるでしょう。

続いて、NISAの2つ目のメリットは、運用資産をいつでも引き出すことができる点(流動性の確保)です。

先ほどご説明したiDeCoはどうだったでしょうか。iDeCoは年金制度のため、60歳までは原則積み立てた資産を引き出すことができません。

これに対してNISAやつみたてNISAの場合は、非課税期間内や非課税期間終了後でも、いつでも自由に引き出すことが可能です。
全部引き出しも一部引き出しも可能です。

そのため、老後の資産形成だけでなくあらゆる用途に資金を使うことができます。
その反面積立の強制力には欠けてしまうので、強制的に老後に向けて積み立てたい人には、時にデメリットにもなり得る点は注意が必要です。

3.2.2 NISA・つみたてNISAのデメリット

【NISAのデメリット】
・すでに保有している投資信託や株式をNISA口座に移せない
・他の課税口座と損益通算ができない
・運用資産の「スイッチング」ができない


NISAのデメリット1つ目は、新規の買付が対象となる点です。
そのため、すでに保有している投資信託や株式をNISA口座に移すことはできません。

デメリット2つ目は、NISAで運用している際に発生した損益を、他の課税口座と損益通算ができない点です。
そのため、NISA口座で売買損失が発生しても、課税口座で保有する他の株式等の配当金や売買益等と相殺することができず、損失の繰越控除(3年間)もできません。

最後に、NISAで資産運用をする場合は、運用資産の「スイッチング」ができません
iDeCoの場合は、すでに運用している資産を他の金融商品に預け替えをすることができますが、NISAの場合は一度売却をすると非課税枠の再利用ができません。

売却して再購入という形での預け替えはできませんので、購入商品を選ぶ際は注意が必要です。

3.3. NISA、つみたてNISAの申込からスタートまでの流れ

3.3.1 金融機関の選択

NISA、つみたてNISAをスタートしたい場合は、最初にどこの金融機関でNISA口座を開設するかを選ぶ必要があります。
これは、金融機関によって取り扱っている金融商品の品揃えが異なるからです。NISA口座で株式運用をしたい人は証券会社で口座開設をする必要があります。

しかし、投資信託での運用を希望している人は証券会社だけでなく、銀行や信用金庫などの最寄りの金融機関でも口座開設が可能です。
さらに最近ではネット証券会社も人気が出てきていますので、自分が使いやすい証券会社を選ぶと良いでしょう。

3.3.2 口座開設の手続き

金融機関を選択したら、そこで口座開設の手続きをします。
その際は本人確認書類の他にマイナンバーの申告も必要になるので、マイナンバーカードを作成してない人は、運転免許証などの本人確認書類の他にマイナンバー通知カードもしくはマイナンバーの記載のある住民票などの準備が必要になります。

NISAやつみたてNISAの口座開設の場合は、金融機関経由で非課税口座の開設が可能かどうかの確認を税務署で行うので、通常2~3週間程度開設に時間を要します。
これは同一人物がNISAを複数口座開設していないかの確認が必要なためです。

しかし、平成31年1月からはこの確認を待たずにNISA口座を開設、取引開始をすることが可能となりました。
ただし、この際、事後的に複数口座開設が判明した場合には、NISA口座で買付済の商品が買付日にさかのぼって課税口座に移されてしまいます。

3.3.3 金融商品の買付

こうしてNISA口座が開設できれば、あとは希望の金融商品を買付します。
その際は、NISA口座と課税口座の選択を間違えて契約しないように注意してください。

3.4. こんな人はNISA向き

3.4.1 積立する自信のない人

では、NISAで運用するのに向いている人はどのような人でしょうか。
ここまでNISA口座についてご紹介してきましたが、強制的に積み立てする自信がない人NISAでの運用が向いているでしょう。

つみたてNISAは毎月自動引き落としで積み立てていきますが、残高がない月は引き落としがかからず、翌月に2ヶ月分引き落とされることもありません。

3.4.2 柔軟に運用したい人

引き落とし金額の変更や引き落としの中断も自由にできますので、余裕のある月だけ積み立てたい人もNISAやつみたてNISAで積み立てる方が合っているでしょう。
さらに、積み立てた資金をいつでも解約できますので、いざという時は引き出せる安心感がほしい人は、NISAで運用することをおすすめします。

ただし、短期間で解約すると元本割れをしている可能性がありますので、引き出すタイミングには注意が必要です。

3.4.3 たくさんの商品から選びたい人

たくさんの商品の中から投資する商品を選びたい人もNISAの運用が合っているでしょう。
iDeCoの場合は、金融機関が用意したラインナップの中から商品を選択しますが、商品数には限りがあります。

その点、特に一般NISAは投資信託だけでなく株式での運用も可能であるため、よりハイリスクハイリターンで運用したい人、さらに投資信託でも一味違うアクティブファンドで運用したいという人はNISAでの運用が合っていると言えるでしょう。

4. 比較でわかる、自分に合った制度はどっちか

ここからは、これまでご紹介したiDeCoとNISAを比較しながら自分に合った商品はどちらなのかを見ていただきたいと思います。

4.1. 運用期間で選ぶ

まずは運用期間で比較してみたいと思います。
iDeCoは、何年間という期間の制限はありませんが、何歳から始めても60歳まで(2022年5月からは65歳まで)しか積み立てることができず、運用も70歳までしか運用することができません。

それに対してNISAやつみたてNISAは、何歳から始めても一般NISAは最大5年間、つみたてNISAは最大20年間運用できますので、資産運用を開始する年齢が遅い人NISAでの運用を検討する方いいでしょう。

その反面、20歳代、30歳代の人が老後に向けて資産運用を開始する場合はiDeCoの方が長期での運用が可能ですので、iDeCoのほうが合っていると言えるでしょう。

4.2. 流動性で選ぶ

次に流動性の観点でみていきたいと思います。
流動性とは、一般的に換金のしやすさのことを指します。普通預金はいつでもキャッシュカードで現金が引き出せますので、流動性が高いといえます。

この観点から見ると、iDeCoは60歳まで引き出すことができませんので、流動性がとても低いといえます。
その反面NISAやつみたてNISAはいつでも換金が可能ですので(ただし投資信託の場合は着金するまでに1週間程度かかります)、iDeCoと比較して流動性は高めです。

いつ換金するかわからない人、いざという時に換金できるほうが安心できる人はNISAで運用する方が良いでしょう。

4.3. 節税効果で選ぶ

次に2つの制度の最大のメリットである節税効果でみていきたいと思います。
iDeCoの場合は先述の通り、積立金が全額所得控除になるだけでなく、受取時も退職所得控除と公的年金控除が使えるというメリットがありました。

NISAの場合は、積立金が全額所得控除になることはありませんが、売却時に非課税で受け取れるというメリットがありました。
節税ポイントの多さからみても、iDeCoの方が節税効果は高いと言えるでしょう。

4.4. 運用商品で選ぶ

次に運用商品のラインナップで比較をしてみたいと思います。
基本的にiDeCoもNISAも口座を開設する金融機関の商品の中から選ぶ必要がありますが、たくさんの商品の中から選びたい人は一般NISAが良いでしょう。

反対に、あまりたくさんあっても選べないからオーソドックスな商品から選びたいという人はつみたてNISAやiDeCoの方が、商品数が限られているため選びやすいかもしれません。
ただし資産運用にとってこの商品選びがとても重要ですので、運用初心者の人はアドバイザーに相談して決めるほうが賢明でしょう。

4.5. 職業で選ぶ

自分の職業も、運用方法を選択する上で重要になってきます。
これは、iDeCoの積み立て限度額は職業などによって異なるためです。

例えば、自営業者などは毎月6万8000円まで積み立てる事ができるのに対し、会社員は、毎月2万3000円が上限となります(勤務先に企業型確定拠出年金制度や確定給付年金制度がない場合)。
また、公務員は毎月1万2000円しか積み立てることができません。

それに対して、つみたてNISAは職業に関わらず年間40万円、一般NISAは年間120万円まで金融商品を購入することができます。

老後のために毎月頑張って積み立てたいという人は、iDeCoだけでは足りないという人もいるでしょう。

また、同じ会社員でも勤務先の退職金などの制度によって上限額が異なりますので、会社員でiDeCoを検討している人は、まずは自分の掛金の上限を把握してから始めるようにしましょう。

4.6. 気になる「ふるさと納税」との関係は

節税制度としてiDeCoやNISAに負けないくらい人気なのが「ふるさと納税」です。

iDeCoを検討している人の中には、iDeCoを始めることで「ふるさと納税」ができなくなるのではと不安に思っている人もいるかもしれません。

結論から言うと、iDeCoを始めることでふるさと納税の控除上限額は下がります。iDeCoをスタートすることで、毎月の掛金が「小規模企業等掛金控除」の適用になり、その分課税所得が下がるためです。

ふるさと納税の控除上限額は、この課税所得に応じて決まりますので、課税所得が下がった分ふるさと納税の控除上限額は下がります。
ここでいくら下がるかはその人の年収や家族構成、iDeCoの掛金額、その他の控除制度の利用状況にもよります。

心配な人は、一度インターネットでシミュレーションをしてみると良いでしょう。
たしかに下がりますが、将来の資産形成という目標があるなら、ふるさと納税の金額がいくらか下がってもそれ以上の効果が期待できるケースが多いでしょう。

5. 併用できるiDeCoとNISA、上手な併用の仕方

ここまでご紹介したiDeCoとNISA、どちらで資産形成をするか迷っている人も多いと思いますが、この2つの制度は併用することも可能です。
むしろ、将来の資産形成のためには上手に併用することをおすすめします。

ただし、どのように併用するとそれぞれのメリットが最大限活用できるかは人によって様々です。
検討する時は、FP(ファイナンシャルプランナー)やIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)などの資産運用のプロのアドバイザーに相談する方が良いでしょう。

この時、

・自身の年収
・家族構成
・現在の勤務先に定年まで勤めた場合の勤続年数
・勤務先の退職金制度の内容
・退職金はどれくらいもらえる予定か
・企業型確定拠出年金制度や企業型確定給付制度の有無など


を事前に把握しておくとスムーズです。

6. iDeCoとNISA、どこの金融機関で始めるべきか

6.1. 金融機関を選ぶ上でのポイント

ここまで読まれたなら、iDeCoとNISAをいざ始めてみようとやる気になっている人も多いと思います。
次のアクションとしては、やはり金融機関選びです。私からは最後に金融機関選びのポイントについてお話したいと思います。

金融機関といっても、近所の証券会社や銀行や郵便局、インターネット専用の証券会社など選択肢は数え切れないくらいあります。
その中であなたに最適な金融機関を選ぶためのポイントは、「コスト」と「サービス」の優先順位です。

コスト重視:インターネット専用の証券会社
サービス重視:店舗設置型の証券会社や銀行、IFA

6.1.1 コスト重視

サービスは必要ないからコストをできる限り下げたいという人は、インターネット専用の証券会社が最適といえるでしょう。

インターネット専用の証券会社なら投資信託を購入するときの買付手数料が無料の商品も多いため、コストを最小限に下げることが可能です。
その反面、気軽に担当者に相談できるサービスを用意していないケースが多いため、商品選びからメンテナンスまで、すべて自分で行う「DIY投資」となります。

6.1.2 サービス重視

コストはかかってもそれに見合う「サービス」を重視したい人は、担当者にすぐ相談できる店舗設置型の証券会社や銀行もしくはIFA(独立系ファイナンシャルアドバイザー)を選択するのが最適でしょう。

買付手数料等がかかるケースが多いですが、その代わりに納得がいくまで商品提案をしてくれる、運用開始後も定期的にアフターフォローをしてくれる金融機関もあります。
投資信託などの金融商品も私たちと一緒で1年に1回は健康診断が必要と言われています。

自分で商品を選ぶこと、メンテナンスをすることが難しいと感じる人はこちらの方が安心して資産運用を継続できるでしょう。

7. まとめ

今回は、iDeCoとNISAを比較しながら上手に活用する方法について見てきました。
iDeCoもNISAもあくまで節税制度の一つですので、一番大切なことは「どの商品で運用するか」です。

iDeCoやNISAを利用して節税効果を狙いたくても、そもそも増えない金融商品を選択してしまうと課税対象の「利益」を生まなければ本末転倒です。
日本国内には投資信託だけでも6000本以上存在します。

この中から自分にはどの商品が最適かを選ぶのは難しくて当然です。
しかも厄介なことに、どの商品で運用すべきかはその人の投資目的や資産の状況、運用の目標金額や期間によって異なりますので、みんなに共通してベストな商品は存在しないと言えます。

自分にとってのベストな商品探しに迷ったら、資産運用のプロのアドバイザーに相談することをおすすめします。
販売経験が豊富なアドバイザーだと多くの人の資産運用に携わっています。
その経験値を味方につけることで、有意義に相談をすすめることができるでしょう。

将来に向けた資産運用は、重要であると同時に失敗が許されないという側面も持っています。
1人で悩まずに、専門家に相談するところから始めてみてはいかがでしょうか。

参考資料

監修
泉田 良輔
  • 泉田 良輔
  • 証券アナリスト/経営者/元機関投資家

2013年に 株式会社ナビゲータープラットフォーム (ナビプラ)をシティグループ証券出身の証券アナリストであった原田慎司らとともに創業。くらしとお金のメディア「 LIMO 」の運営等を行う。2018年に金融サービスを展開する 株式会社OneMile Partners を設立、CCO(チーフコンテンツオフィサー)に就任。大学卒業後、日本生命・国際投資部では外国株式ファンドマネジャー、その後フィデリティ投信・調査部や運用部にてテクノロジーセクター証券アナリストや小型株ファンドのアシスタント・ポートフォリオ・マネージャー。慶応義塾大学商学部及び同大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了(研究科最優秀賞)。著書に 『銀行はこれからどうなるのか』『機関投資家だけが知っている「予想」のいらない株式投資法』 など。また「日経BizGate」での連載 「泉田良輔の新・産業鳥瞰図」「現代ビジネス」「東洋経済オンライン」「プレジデント」 などへの寄稿や対談 「米独に遅れる日本の自動運転、自動車も電機の二の舞に?(週刊ダイヤモンド)」 も多数。海外ジャーナリストからインタビューされることも多く、 Financial TimesThe EconomistBloomberg において自動車や金融業界についての国内外産業動向コメントも発信している。動画での情報発信も盛んに行っており、NewsPicksのTHE UPDATEに数多く出演。 東京工業大学大学院非常勤講師 としてエネルギー政策・経済特別講義を2016年度から行う。 日本証券アナリスト協会認定アナリスト(CMA) Twitter: @IzumX

著者
谷口 裕梨
  • 谷口 裕梨
  • ファイナンシャルアドバイザー

同志社大学卒。大学卒業後、京都中央信用金庫で投資信託や生命保険などを活用した資産運用アドバイス、相続相談、融資、為替業務などに従事。その後は福知山市役所で主に中小企業支援などに携わる。現在はこれまでの金融商品の知識を生かし、個人向け資産運用のサポート業務を行う。2級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP2級)、一種外務員資格(証券外務員一種)などを保有。

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